バウムテストとは
バウムテストは木を一本描いてもらい、描いた木の絵やその描き方から被検者の心の状態や人格特性を測定する描画法です。
長所として、本人も認識していなかったような心の状態に気づくことができます。逆に短所としては、検査を実施する人の熟練度に依存してしまう、解釈の仕方が客観性に欠けるなどのことが挙げられます。
スイスのカウンセラー、ユッカーが着想した木を描くという方法を、同じくスイスの心理学者コッホが心理検査として考案したものがバウムテストです。
この検査では、一本の「実のなった木」を描いてもらいますが、場合によっては実のなっていないただの木を描いてもらうこともあります。
「実のなった木」という指示は、バウムテストが開発されたスイスはモミやトウヒなどの針葉樹が多く、「木を1本描いてください」という指示だけだと、みんな針葉樹を描いてしまい、特徴が薄くなってしまうため、そのような指示が出されるようになったそうです(諸説あり)。
解釈の方法
大きく以下の3つの視点から解釈していきます。
- 描かれた樹木の形の分析(形態分析)
- 鉛筆の動きの観察(動態分析)
- 樹木の紙面における配置(空間象徴)
形態分析
バウムテストで描かれる木は描いた本人を表しており、幹を自分自身、葉っぱの部分は自分の領域、その外側は自分以外の周りの領域になります。
実際にセラピーの中でバウムテストを行う場合には向かい側に他者であるセラピストがいることになるため、葉っぱの部分の輪郭は他者へのアプローチの感覚を投影していると考えられます。
また、対人アプローチだけでなく、問題解決のへのアプローチなども樹木の形に影響を与えることがあります。
具体的には幹の太さ、樹皮の描き方、樹冠、根の描き方、枝の本数、枝の位置・長さ、葉っぱ、地面の描き方、全体的な線の太さ・細さなどを見ていきます。
精神状態によって描かれる木の様子は変わってきますが、例えばうつ病や統合失調症で心のエネルギーが弱い場合は線の数が少なくなったりします。(これは他の描画法でも見られる特徴です)
ちなみに、スイスの針葉樹の話を前述しましたが、描かれる木は被検者が生活の中でよく見る木が多くなるそうです。例えば、日本で高齢者を対象にした研究では、カキの木を描いた人が多かったそうです。
動態分析
同じような形の樹木でも、人によって描き方が異なっていることがあります。そのような描き方の相違は性格によるところが大きいです。
具体的に観察していく点としては、鉛筆を動かすスピードは速いか遅いか、一定か不規則か、激しい動きか、大きな動きか小さな動きかなどです。
空間象徴
空間の認識に関しては以下のグリュンワルドの空間図式を解釈の手助けにすることが多いです。用紙のどの位置に絵が描かれているか、ということでその人の心の状態を測定します。
例えば、絵が左下に描かれていたり、寄っていたりする場合は、未来への恐れや子どもの頃に戻りたいという願望などが現れています。
バウムテストだけでなく箱庭療法に用いられたりしますが、その妥当性に関しては賛否両論ある理論です。
グリュンワルドの空間図式
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参考文献