防犯に関する心理学の理論

 

防犯に関する犯罪心理学の理論をいくつか挙げていこうと思います。

CPTED

前回の記事でも紹介した犯罪を防止するための環境設計に関する理論です。

犯罪の起きやすい建物 - 心理学のはな

主に以下の4つの要素が犯罪が起きにくくなるポイントです。

接近防御(Access management)

外部からの人間が侵入したり接近するのが難しい。

ターゲット強化

ターゲットになりやすいものを安全にする。

具体的には店先に商品を並べるよりも店の中で店員が見える位置に商品を置く、子どもが遊ぶ公園は、知らない人が子どもに近づくと目立つようにするなど。

領域性の確保(Territorial reinforcement)

特定のコミュニティの空間であることを強調するため、境界を明確にする。

監視(Surveillance)

何をしているかわかるような死角のない見通しのいい空間。

 

 

割れ窓理論

これはアメリカの犯罪学者ケリングによって提唱された有名な理論です。

小さな無法状態が、やがて地域全体の治安の悪化につながるというものです。

例えば、窓が一枚割れていて誰も修理をしていないとします。

この状態では全く窓が割れていない状態よりも、誰かが別の窓を割る可能性が高くなります。それ以外にも、そのあたりの清掃をする人が少なくなったり、落書きをする人も出てくるかもしれません。そうして、荒れ果てたまま放置されると、健全な市民はそこに近づかなくなりますし、不良のたまり場になったりして、犯罪の現場になっていきます。場合によっては治安の悪さが地域全体に広がっていき、悪循環になっていくこともあります。

そして、その逆に街で落ちているゴミを拾ったり、町の景観を保つことで、治安の維持につながることも主張されています。

 

 実際にこの割れ窓理論を活用した例もいくつか存在します。1970年代のニューヨークの地下鉄は所かまわず落書きがされていたり、いすが壊されていたりしました。

犯罪渦巻く70年代のニューヨーク市地下鉄を20枚の写真で振り返る

そこで、落書きを消したり、設備の維持により一層努めるようにしていきました。すると、地下鉄での犯罪率はかなり少なくなったそうです。

また、有名な話ではディズニーでは施設内でごみが落ちたままになっていたり、景観が損なわれた状態がないように徹底しているそうです。その結果、お客さんであるゲストもゴミをポイ捨てするようなことが少ないそうです。

 

割れ窓理論への批判

割れ窓理論は一見有効な理論ですが、その効果に懐疑的な意見もあります。前述のニューヨークの地下鉄の例でも、麻薬の流行の終息など他の要因があったのではないかという声があります。

また、このようにどんなに小さな汚れも見過ごさないような政策(ゼロ・トレランス政策)は、市民の自由を奪ってしまうおそれがある、と危惧する人もいます。

 

 

犯罪者の合理的選択理論

イギリスのクラークが考案した防犯理論です。これは人が犯罪を行うのは犯罪を行うことによって得られる利益と捕まるリスクなどのコストを天秤にかけて、利益が上回るためだという考えです。

クラークはこの理論に基づいて、施錠や監視の強化、店舗に多額の現金を置かないなどの対策を主導していったそうです。

 

 

日常活動理論

この理論では犯罪が行われるのは、犯行動機のある人と、その人にとって魅力のある犯行対象と、犯行を止める守り手がいないためであるとされます。生活が豊かになっても、財産を狙う犯罪が起こったりするのはこの理論で説明されます。犯行動機のある人と対象になるものが接近することが考えられる場所に守り手を配備することで、より効率的に防犯をすることができます。

 

 

犯罪の転移

一部の地域や施設が防犯対策を徹底しても、他の地域で犯行数が増加してしまい、全体的な数は変わらないという理論です。また、地域が変わるだけでなく、夜の防犯を強化したら、昼の犯罪数が増えるなど、時間的な転移も起こる恐れがあるそうです。

ある程度大規模な防犯対策を行わなければいけないことになりますが、この理論を裏付ける研究はあまりなく、現在では次の理論の方が現在では主張する人は多いです。

 

利益の拡散

一部の地域で防犯活動を活発に行えば、その効果が別の地域にも広まっていき、全体の犯罪数も減っていくという理論です。割れ窓理論の防犯バージョンですね。犯罪の転移と矛盾するように思われますが、実際には利益の拡散が起こることが多く、ごくまれに犯罪の転移が起こることがあるそうです。

 

 

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参考文献

環境心理学と犯罪研究

 

 

 

心理学のはな

 

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