断酒治療の経過
昨日は断酒治療中の再飲酒の問題について取り上げたので、今日は断酒治療の経過について、患者本人に注目してみていきたいなと思います。
前回の記事はこちらから
では、見ていきましょう。
断酒開始~1ヶ月
断酒を始めた初日から1ヶ月は解毒期と呼ばれます。毎日浴びるようにお酒を飲んでいた人が飲まなくなると、アルコール血中濃度が急激に低下し、離脱症状に襲われます。そのため、身体的にも精神的にもつらい時期と言えます。
この離脱症状にも小離脱と呼ばれる初期の離脱症状と、大離脱と呼ばれる後期の離脱症状があります。
小離脱は断酒開始6時間後くらいから1日経つくらいまで起こるもので、手が震えたり、汗をかいたり、眠れなかったり、不安に駆られたりします。このタイミングで再び連続飲酒状態に戻ってしまう人もないです。
大離脱は断酒開始から2日から4日ごろをピークに現れる離脱症状で、小離脱で見られた症状に加え、見当識障害(自分のいる場所や今の時間がわからないなど)、幻視や激しい震えせん妄等の症状が出てきます。外来治療をされている患者さんでもこの大離脱がひどいと入院することもあります。
断酒開始から1ヶ月~3ヶ月
解毒期を抜けると台風が通り過ぎた後のように平穏な時期が訪れます。飲酒欲求がなくなり、離脱症状も収まって、過去を振り返ると「どうしてあんなにお酒におぼれていたんだろう」と思ったりします。
再び依存症に陥る危険は低くなってきましたが、逆に「やっぱり自分はちゃんと飲酒量をコントロールできるんだ」「依存症ではなかった」と思いこんでしまうこともあります。
断酒開始から3カ月~1年
この時期も基本的には安定していますが、ふとしたことで飲酒欲求に襲われることがあります。
例えば、半年や1年という区切りのいいときは達成感がありますよね。達成感は人によっては飲酒欲求を掻き立てられます。
「断酒してから今日で半年だし、お祝いに一杯飲みたいなあ」という思考回路は、文字にすると笑ってしまうかもしれませんが、結構ありがちです。自分では思ってなくても周りの人に一杯だけと勧められることもあります。
その他にも慢性的な離脱症状が見られることがあり、依然油断できない状態です。
断酒開始から1年後
この時期まで断酒を継続できれば、離脱症状もほとんど出てきません。
ただ、この時期になったら安心できるかというとそういうわけでもありません。基本的に一度アルコール依存症になったら、どんなに時間が経っても、一番ひどかった時期に戻ってしまう危険を秘めています。
もちろんずっと再飲酒に怯えているのも本末転倒なので、症状が落ち着いてきたら何かお酒以外に楽しめる趣味を探して生活を充実させていくのがいいのかなと思います。
このブログでは臨床分野を中心に心理学についての情報をまとめています。
ぜひ他の記事も見ていってください!
関連記事
アルコール依存症に関するおすすめ書籍