エディプス・コンプレックスとは
エディプス・コンプレックスはフロイトの提唱した精神分析における概念で、男の子が無意識のうちに母親に愛情を向け、父親に憎悪を向けてしまうという感情のことを指します。
フロイトによると、発達の過程で5,6歳ごろの男児は男と女の違いに気づき、母親に関心を向けるようになるそうです。この母親への関心は、父親の怒りを喚起するのではないかという恐怖感を感じることにつながっていきます(去勢不安)。そのため、父親の怒りをしずめ母親の愛を得るために、母親が愛している父親のようになろうとします。
このように引き起こされたエディプス・コンプレックスが神経症の要因になると、フロイトは考えました。
また、エディプス・コンプレックスの女の子版としてエレクトラ・コンプレックスと呼ばれるものがあります。これはユングが提唱した理論で、4歳から5歳ごろの女児は父親に愛情を持ち、母親に敵意を持つようになるとされています。エディプス・コンプレックスとの明確な違いとして、こちらは去勢不安ではなく、男根への憧れ(男根羨望)があり、そのため男根のない自分を生んだ母親を責めるということが主張されています。
エディプス・コンプレックスへの批判
エディプス・コンプレックスは普遍的であるか、客観的であるか、ということに関してはかなり批判があります。具体的にはユングが「外向的な人間ではエディプス・コンプレックスが見られるが、内向的な人間では見られないこともある」と主張していたり、西洋の文化の中でのみ見られるもので、日本をはじめとする東洋では見られない文化ではないか、という意見もあったりします。
また、エレクトラ・コンプレックスに関しても、そもそも女児が男根を持たないことに劣等感を抱くというのは男性優位思想からくるものであり、根拠が弱いのではないかという指摘もされています。
名前の由来
エディプス・コンプレックスは、ギリシャ神話のエディプス王(オイディプス王)の悲劇が由来になっています。
テバイの王ライオスは妻イオカステとの間に子をもうけますが「お前の子がお前を殺し、お前の妻との間に子をなすだろう」という信託を受けたため、その子を殺そうとしました。しかし、結局子どもは山に捨てられ、隣国のコリントス王夫妻に拾われ、エディプスとなずけられ息子として育てられました。
成長したエディプスは、コリントス夫妻の実子ではないという噂を耳にして、神に真実を尋ねます。すると「お前はお前の父を殺し、お前の母との間に子をなすだろう」という信託を受けたため、コリントス王を殺すことがないよう、国を離れました。
旅の途中、偶然にもエディプスは実の父ライオスと出会います。しかしふとしたことから争いになってしまい、それが実の父であることも、テバイの王であることも知らないまま、エディプスはライオスを殺してしまいます。
その後、テバイの国を苦しめていた怪物スピンクスを倒したエディプスは、いなくなった先王の後を継ぎ、その妻とも交わり、二人の間には子どもが生まれました。
そう、図らずもエディプスは信託の通り父を殺し、母との間に子どもを産むことになったのです。その後、エディプスは真実を知り、苦しむことになります。
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