今回は行動変容のステージモデルについて解説していきたいと思います。
これは生活習慣を変えるときどのようなプロセスを経ていくのか、ということに注目した理論です。人の行動習慣は簡単には変わらないという前提で、依存症や不健康な生活習慣などの良くない行動習慣がどのようにして変化していくのかをまとめています。
どこか特定の流派に基づいた理論というわけではなく、いろいろな心理療法の理論を参考にしているため、あまり聞いたことがないという人もいるかもしれません。
この理論は生活習慣を改善する気がない状態から実際に改善した後の状態までの心理を体系的に説明しており、実際の臨床場面に当てはめて考えやすいです。また、公認心理師試験でもこの理論に基づいた臨床場面の問題も出題されており、そういった意味でも覚えておくと良いと思います。
行動変容ステージモデルは大きく5つの時期に分けられており、
前熟考期(precontemplation)
熟考期(contemplation)
準備期(preparation)
実行期(action)
維持期(maintenance)
に分けられます。場合によってはこれの応用として、維持期の後に確立期や再発期などといった時期が入ってくる場合もありますが、基本はこの5つですので、これらを覚えておくといいでしょう。
前熟考期(precontemplation)
6ヶ月以内に行動を変えようと思っていない時期です。無関心期とも呼ばれます。
問題に対してとくに何か取り組んでいこうとは思っていません。
この時期に何か助言をしても、それを否定したりサポートを拒否してしまいます。
そのためこの時期の適切な対応としてはやる気を高めるための動機づけをすることと思われます。
行動変容のメリットを伝えることなどが挙げられます。
熟考期(contemplation)
6ヶ月以内に行動を変えようと思っている時期です。関心期とも呼ばれます。
問題があることに気づいたり、問題解決への関心が現れてきますが、今すぐに何か具体的な行動をしようとは思っていない状態です。
この時期の働きかけでは行動変容のメリットを具体的に伝えることで、行動変容の動機を高めることができます。
準備期(preparation)
1ヶ月以内に行動を変えようと思っている時期です。
より真剣に行動を変えようと考えています。
この時期の働きかけは動機づけを高めるよりも現実的な問題設定や方法について考える手助けをしたり、適切な情報提供をしていくことが大切です。
実行期(action)
行動を変えて6ヶ月未満の時期です。
この時期の働きかけでは、ご褒美の設定や自己効力感の強化をしたり、実行したメリットの実感を持ってもらうようにするのがいいです。
ご褒美の設定は本人がやっても周りの人がやってあげてもいいですが、例えば「〇日間続いたら~を買う」というように何か物理的なご褒美だけでなく、小さな目標を達成できたら褒めてあげるなど精神的なものも有効です。
自己効力感とは、簡単に言うと「自分は自分自身をしっかりコントロールできる」と思える感覚のことです。
自己効力感を高めるためには昔の成功体験を振り返ったり、他の人の成功体験を聞いて真似してみる(この方法で成功できるんだ、という自信になります)、などの方法があります。自分ひとりだと難しいし、相談できる人も身近にいないという人はカウンセリングに行ったりや自助グループに参加するのもいいと思います。
維持期(maintenance)
行動を変えて6ヶ月以上の時期です。ここまでくるとほとんど自立しており支援はあまり必要ありません。
ただ、こういった行動変容させていったものは何かの拍子にまた元の状態に戻ってしまうことが多いです。もし元の状態になってしまっても支援者がそれに一喜一憂するよりもその失敗からどのようなことが学べるのか、というのを働きかけることが大切です。
もし、再びもとの状態に戻った場合は、前熟考期か熟考期に戻ったということになります。ここから準備期そして実行期に移っていくまでの時間は人それぞれです。
まとめ
どのような時期があるのか、そしてその特徴だけでも覚えておくといいと思います。
前熟考期・・・6ヶ月以内に行動を変えようと思っていない
↓
熟考期・・・6ヶ月以内に行動を変えようと思っている
↓
準備期・・・1ヶ月以内に行動を変えようと思っている
↓
実行期・・・行動を変えて6ヶ月未満である
↓
維持期・・・行動を変えて6ヶ月以上である
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