書評:オオカミ少女はいなかった

 

 

書評:オオカミ少女はいなかった

この本はサブリミナル効果、ワトソンのアルバート坊やの実験など心理学の有名な理論や実験の間違いや不備、疑問点などを挙げている本です。

 

タイトルにもなっているアマラとカマラの話から始まり、サブリミナル効果、言語相対仮設、賢いハンス…などなど様々な理論や研究を章立てで取り上げています。

 

個人的にはぜひ心理学を学び始めてしばらくたったころ、心理学部の大学生だったら大学1年の秋から冬くらいに読んでほしいと思います。

 

というのも、この本で扱っているテーマは上記のように心理学の初学者が誰もが勉強するような有名な理論が多いです。そしてそれゆえに名前やその内容を丸暗記してしまいがちなものでもあります。

 

しかし実際にはこれらの理論が提唱された背景には必ずしも明確な、はっきりした根拠のある調査が行われていない場合があります。そして、それは本書で取り上げられている実験だけでなく、今現在心理学の世界にある論文も例外ではありません。

 

信頼できる論文を見つけるためには、研究の穴を検知したり、別の角度からその研究をみるようなクリティカル・シンキングを養う必要があると思います。この本では、実験者効果など、実験の穴となる要素や倫理的問題の視点についても言及しており、そうしたクリティカル・シンキングを養えるような一冊となっています。

 

章立てで読みやすいので、ぜひ興味のあるところから読んでみてほしいと思います。