基本感情説と次元説 <心理学解説>

 

 

心理学の中でも中心的なテーマである感情。そんな感情の理論には基本感情説と次元説という2つの説があります。

 

基本感情説

基本感情説では、いくつかの基本となる感情の存在を想定します。基本感情説の歴史はダーウィンの表情研究にまでさかのぼります。

 

ダーウィンの進化論的感情説

進化論で有名なダーウィンですが、彼はは感情の最もわかりやすい表し方である表情についての研究も行いました。

ダーウィンはヒトと動物の顔の動きを比較した結果、進化的な連続性があると主張し、個々の感情が表す表情は普遍性があるとしました。この考え方はのちの基本感情説に大きな影響を与えることになります。

 

エクマンの基本感情説

エクマンは基本感情説を主張した代表的な研究者の一人です。彼はアメリカ人とまったく交流の無かったパプアニューギニア先住民族に対して、アメリカ人が様々な表情をしている写真を見せました。彼らがアメリカ人を見るのも初めてでしたが、なんと表情が示す感情の読み取りは非常に高い正答率でした。このことからエクマンは、人種や文化を超えた基本感情の普遍性を主張し、喜び、驚き、怒り、恐れ、嫌悪、悲しみの6つが基本感情であるとしました。

さらに、エクマンやその仲間の研究者たちは、表情によって反応が付随する自立神経系が異なることを明らかにしました。この現象は自立神経の反応特異性と呼ばれています。

 

プルチックの感情色立体モデル

プルチックは基本感情説の中でもかなりユニークな理論を主張しました。それが感情色立体モデルです(プルチックの感情の輪とも呼ばれます)。

基本感情説への批判として、基本感情として主張されている感情以外にも我々は様々な感情を持つことが挙げられます。例えば、上記6つの基本感情を主張したエクマンの説ですが、満足感や倦怠感、緊張といった感情に関しては説明しきれていません。

 

これに対しプルチックは、感情も色のようなものだと主張しました。同じ色でもその濃さが違えばその見え方は変わってきます。また、2つの色を混ぜるとまた別の色になったりします。

プルチックは基本感情として喜び、怒り、悲しみ、驚き、恐怖、嫌悪、受容、期待の8つの感情を想定しました。これは色でいうと原色です。そして、赤が薄くなってピンクになるように、悲しみがが弱くなると物思い、逆に強くなると悲嘆…といったように感情も変化することを主張しました。そして、怒りと嫌悪が合わさって軽蔑、喜びと受容が合わさって愛など、2つの感情が合わさると別の感情になるというのも、プルチックは述べました。

 

基本感情説ではこのほかにも、イザード、ジェームズなどの研究者が有名です。

 

次元説

次元説は基本感情説と対立した理論です。基本感情説では以下のような疑問点が指摘されていました。

・研究者によって基本感情の数が異なる

・基本感情が生得的なものという証拠が弱い

・同じ刺激でも人や場面によって受け取り方が異なっている

・自律神経の反応特異性も、驚きと怒りが似通っているなど、曖昧なところがある

 

このような問題点から、感情を基本感情ごとに分ける考え方ではなく、いくつかの要素の違いで連続的に変化するものだという主張が現れました。これが次元説です。

 

ラッセルの円環の円環モデル

次元論で代表的な研究者はラッセルの円環モデルです。

ラッセルは快-不快、覚醒-睡眠という2次元の感情説を想定しました。

ラッセルの円環説では、この2次元を十字において、その周りを円状にそれぞれの感情が配置されています。

 

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