今回はPTSDについて書いていこうと思います。
この障害は心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder)といい、英語の頭文字をとって、PTSDと呼ばれます。
これは対処不可能なストレス刺激を受けて激しいショックを受け、そのストレス反応が一定期間以上続いている障害のことです。
このストレスとは普段の生活で受けるものではなく、生命の危機を感じるような、あるいは実際に重症を負った出来事などが当てはまります。また、PTSDと聞くと自分自身のストレス体験が原因だと考えがちですが、そうとも言い切れません。自分自身だけでなく、家族や友人など親しい人の命が目の前で脅かされたり、そのような体験をしたと知ることでも、PTSDを発症する場合があります。
PTSDの原因となる出来事(心的外傷体験)は戦争や災害などをイメージしがちですが(実際これらによる発症ケースは多いですが)、事件や事故に巻き込まれる等身近な例も存在します。
心的外傷体験とPTSD発症率を調べた研究では特に戦争体験とレイプ被害はPTSDを発症する割合が高かったそうです。
また、よくトラウマとPTSDはその定義が混同されがちですが、トラウマは主に精神に大きなダメージを与えるような体験(心的外傷)のことを指し、PTSDはそれによっておこるストレス障害のことを指します。
PTSDの研究は昔からされていましたが、特にアメリカではベトナム戦争の帰還兵の多くがこの症状に悩まされていたことが社会問題となり、注目を集めるようになりました。
一説によると、帰還兵の3割がPTSDを体験していたそうです。
日本では阪神淡路大震災や東日本大震災といった災害の被災者がPTSDを発症するケースが多く、こちらも社会問題となっています。
状症
最も大きな点として、トラウマとなった出来事を忘れようとしても思い出してしまうことが挙げられます。思い出し方は様々で、つい思い浮かんでしまうこと、見たり聞いたりしたものから連想してしまうこと、夢に出てくること、フラッシュバックしてくることがあります。
(フラッシュバックはただ思い出すことというより、トラウマとなった出来事を再体験しているかのような感覚にとらわれます)。
そのため、トラウマ体験を思い出してしまうような場所やもの、人間を避けるようになったり、直接的な関連がないものに対しても過度な恐怖心をもつようになります。
そのほか、不眠、食欲不振など様々な症状が見られることがあります。
治療
現在有効性であると考えられている治療として、認知行動療法(エクスポージャー法)、EMDR、抗うつ薬(SSRI)による薬物療法があります。
エクスポージャー法は別名暴露療法ともいい、強迫症などの治療にも用いられています。
この心理療法は実際に不安を感じる場面に直面する体験を繰り返していき、不安を軽くしていく方法です。かなり効果がありますが、いきなり不安場面に直面するのは無理という人もいるので、そういった場合は系統的脱感作法など比較的やりやすいものから行うこともあります。
EMDRとは「眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)」の略で日本EMDR協会によれば、PTSDに対する有効性が科学的に証明されている心理療法です。トラウマ体験を考えながら、顔の前で指を動かし、それを目で追っていきます。こう聞くと誰でもできそうと感じるかもしれませんが、ちゃんとした訓練を経験した専門家でなければ効果は出にくいそうです。
もともとはフランセス・シャピロというアメリカの行動療法を得意とする心理学者が考案したものですが、現在では脳の情報処理過程に注目した研究となっています。
EMDRは、トラウマ経験は不適応的なコーディング、不完全な処理によるものであり、経験を適応的に処理する過程に障害を受けているためだと仮定する適応的情報処理モデルに基づいています。
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