発達の最近接領域はソビエト連邦の心理学者レフ・セミョノヴィチ・ヴィゴツキーが提唱した理論です。
ちなみに、ヴィゴツキーは38歳という非常に若い時期にこの世を去り、その研究期間は10年ほどしかなかったのにも関わらず、後世に残る研究や実験を数多く行い、その後の心理学にも大きな影響を与えていることでも知られています。
発達の最接近領域
ヴィゴツキーは、発達と教育の関連について注目し、子どもの知能の発達を2つに分けて考えました。
一つは子どもが自分ひとりで課題を達成することができる現在の発達水準です。
そしてもう一つは、だれか他人が援助してあげたり課題達成に協力してあげることで達成できるようになる予測的発達水準です。
そしてこの2つの水準の差を、ヴィゴツキーは発達の最近接領域と呼びました。
例えば、小学2年生の問題を一人で解くことができて、先生からヒントをもらえば、小学4年生の問題を解くことができる子どもは、現在のの発達水準が小学2年生、予測的発達水準が小学4年生と言えます。
ヴィゴツキーの主張では、教育はその子の発達の最近接領域に適したものでなければならない、としています。つまり、私たちが普段注目しがちな一人で解ける問題(現在の発達水準)ではなく、ヒントをもらうなどして解くことができる問題(予測的発達水準)に基づいて、指導していくべきだと主張しました。
このように自分ひとりでは難しい課題を、誰かに手伝ってもらうことで解決することで、発達が促されるようになります。
具体的には、子どもができないことは大人がまずやり方を見せてあげたり、一緒にやってあげることが、子どもの発達にとって欠かせないとされています。
さらにヴィゴツキーは、このような発達の最近接領域を作り出すような教育をしていくよう、主張しました。
発達の最近接領域の応用
現在、発達の最近接領域を教育に応用しようという研究は盛んに行われています。例えば、絵本が発達の最近接領域を生み出す「場」として用いることができないかというものや、教えられる側が教える側に貢献することに関する研究などが行われています。
また、本来は子どもの学習と発達に関する理論でしたが、高校生や大学生に対しても有効であるとされています。
関連記事