「何か食べたい」、「宇宙飛行士になりたい」、「みんなに認められたい」というように私たちは普段、様々な欲求を持って生きています。心理学ではそんな欲求の分野についても、いくつかの仮説が提唱されています。
マズローの欲求階層説
マズローは欲求階層説以外にも人間性心理学を提唱したことでも有名なアメリカの心理学者です。人間性心理学の分野でほかに代表的な人としてカール・ロジャースが挙げられます。
マズローの欲求階層説では「人間は自己実現に向かって成長する」という仮定のもと、人間のもつ欲求を5段階に分けました。
第1の欲求:生理的欲求
食欲や睡眠欲など、身体的な欲求のことです。欲求階層説では最も低次の欲求とされています。
第2の欲求:安全の欲求
災害、事件、病気などの危険から身を守りたいと思う欲求です。
第3の欲求:社会的欲求
「所属と愛の欲求」ともいわれたりします。組織に所属し居場所を得たい、愛し愛されるような人間関係を築きたいと思うような欲求です。
第4の欲求:承認の欲求
周りの人から高い評価を得たい、尊敬されたいと思う欲求です。
第5の欲求:自己実現欲求
自分が理想とする自分になりたい、という欲求です。
生理的欲求から承認の欲求は欠乏欲求ともいわれます。それに対し、自己実現欲求は成長欲求ともいわれます。
マズローは、低次の欲求が満たされることで、より高次の欲求が活性化されるとされています。例えば、「おなかがすいた」という生理的欲求が満たされれば次に「一人でくつろげる家に帰りたい」という安全の欲求が現れてきます。
マズローの欲求階層説はかなり広く知られていますが、科学的根拠に乏しい、文化による差異を考慮していないとして、批判する意見もあります。
ERG理論
マズローの欲求階層説ほど知られていませんが、アルダファのERG理論も人間の動機についてまとめた説です。アルダファは、マズローの説を前提にさらに理論を発展させていきました。
ERGはそれぞれの欲求の頭文字からとられています。
第1の欲求:生存欲求(Existence)
生活していくために必要な衣食住を求める欲求です。マズローの説における生理的欲求と安全の欲求に対応します。
第2の欲求:関係欲求(Relationship)
自分の周囲の人とよりよい関係を築きたいと思う欲求です。マズローの説では所属と愛の欲求、承認欲求に対応します。
第3の欲求:成長欲求(Growth)
理想的な自分に成長していきたいという欲求です。マズローの説の自己実現欲求に対応します。
マズローの説との大きな違いとして、マズローの説では低次の欲求が満たされなければより高次の欲求が活性化することはないとされていましたが、アルダファの説では高次の欲求と低次の欲求が同時に現れることもあるとされています。