ゲームが暴力性・攻撃性を増加させるのではないか、という研究は何年も行われているため、聞いたことがある人が多いと思います。
つい先日もゲームと暴力性の間には関連がなかったという論文が発表されていました。
果たしてゲームと暴力性に関連はあるのでしょうか?ないのでしょうか?
暴力性を助長する、という研究
2003年にアメリカで行われた研究では、有名な格闘ゲーム「ストリートファイター」をプレイした人では、特に女性で攻撃性が増加していたことが言及されています。日本における研究でもテレビゲームの使用量と攻撃性に関して相関が見られたという結果が出ています(井堀他,2003)。
その他、 1984年から1998年までに海外でゲームと攻撃性に関する研究9つのうち、5項目は何らかの相関が見られたそうです。日本では、1999年から2001年に行われた9個の研究のうち7個の研究で相関が見られたそうです。
助長しない、という研究
一方、ゲームと暴力性に関して相関が見られなかった研究もあります。
先ほど、日本と海外でゲームと攻撃性の間に関連がみられた研究について言及しましたが、逆に関連がみられなかった研究も日本で2つ、海外で4つありました。
また、攻撃性とは直接関係はありませんが、MMORPG(大勢が同時に同じ世界で参加するオンラインゲーム)をプレイする人を対象に調べた研究では、いろいろな人と出会うという対人関係の拡張が実感されたり、集団に所属しているという所属感の獲得が得られたそうです。所属感の獲得は現実の生活での社会性の高さとも関連があるので、「オンラインゲームによってコミュニケーション能力や社会常識を身に着けた」、という人がおかしくないかもしれません。
また、ちょっと意外な結果で、松崎他(2004)では、ゲームの使用時間が長いほど攻撃性が高くなるという結果でしたが、実は継続年数に関しては長期間になるほど攻撃性が減少するという結果を得られました。
以上のことからもわかるように現時点でゲームと暴力性の間にどのような関連があるのか、今は断定的な結論はでていません。 しいて言うならば、直近の研究では関連がないことを示唆するものが多いですが、それも確定ではないと思います。
このテーマに関する研究はたくさん行われていますが、まだまだ研究の余地があると思います。例えば、ゲームのジャンル別の攻撃性の関連や、ゲームを始めた年齢と攻撃性の関連を検討した研究は意外と少ないです。今後はよりそういった部分にも注目した研究もされてくると面白そうですね。
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参考文献
インターネット上での行動内容が社会性・攻撃性に及ぼす影響 : ウェブログ・オンラインゲームの検討より