犯罪の起きやすい建物

 

犯罪が起こらないようにするための心理的なアプローチを防犯心理学と呼ばれています。

防犯心理学の研究はある事件を契機に始まりました。

 

プル-イット・アイゴーの失敗

1954年、アメリミズーリ州セントルイスで、プルーイット・アイゴーという低所得者向けの集合住宅が建設されました。団地とマンションを足して2で割ったようなデザインや機能で、エレベーターが設置されていたり、住民どうしが交流できるスペースが用意されていました。余談ですが、この建物を設計したのはミノル・ヤマサキという日系2世の建築家で、のちにあのアメリカ貿易センタービルの設計も行っています。

満を持して完成したプルーイット・アイゴーですが、数年も経つと、その環境は荒れ果てていきました。犯罪がはびこり、多くの住民が去っていってしまったのです。そして完成から18年後の1972年、プルーイット・アイゴーは爆破解体されてしまいました。

 

どうしてこのようなことになってしまったのでしょうか?

予算の縮小、もともと治安の悪い土地柄など様々な要因がありますが、一つの大きな要因として非常に犯罪が起きやすい環境だったことが挙げられます。

 

公共建築の専門家ニューマンは以下のような要素がプル―イットアイゴーには足りなかったといわれています。

領域性

その建物や空間がそこに住む人々のものだということを明確に示しており、外部の人間が入りづらいかどうかという要素です。プルイット・アイゴーは住民以外の第3者が入りやすかったそうです。

境界の画定

プル―イット・アイゴーには住民どうしが交流できるスペースがありましたが、ここは公共の空間なのか、住民だけのための空間なのかわかりづらく、犯罪者のたまり場のようになってしまったそうです。

自然監視

自然監視とは、その空間の中で住民が生活していると自然とほかの住民や外部からの侵入者の不審な行動を監視することができるというものです。共有スペースや共用廊下に死角の多い作りだったプル―イット・アイゴーは、かなり犯行しやすい環境だったそうです。

イメージ

住民に好まれるようなイメージのよい施設ならば、住民がそのコミュニティを守るため、自主的に治安の維持管理に努めるようになっていきます。逆に不名誉なコミュニティだったり、没個性的な施設だったりするとそのような動機は生まれません。プル―イット・アイゴーは、当時としてはかなりモダンなつくりでしたが、低所得者向けだったこともあり、かえってその特異なデザインはマイナスイメージにつながってしまったそうです。 

環境

単純に安全とされている場所にある住宅ほど治安はよくなります。

プル―イット・アイゴーが建設されたのはスラム街を取り壊した土地であったため、「そもそも治安が悪い土地柄のせいなのでは?」という意見を持つかもしれませんが、カー・スクエア・ビレッジという隣接していた小規模の建物は比較的治安が良かったそうなので、一概に土地柄のせいにはできないのかなと思います。

 

 CPTED ー防犯環境設定ー

ニューマンの理論をもとにしてジェフリーが提唱したのが、CPTED(crime Prevention Through Environmental Design)、日本語に訳すと防犯環境設定という理論です。この理論は住居だけでなく、お店や交通機関など様々な施設に応用できます。

時代によって何度か修正されていますが、現在では基本的に以下の4つの原理が主張されています。

 

接近防御(Access management)

外部からの人間が侵入したり接近するのが難しい。

ターゲット強化

ターゲットになりやすいものを安全にする。

具体的には店先に商品を並べるよりも店の中で店員が見える位置に商品を置く、子どもが遊ぶ公園は、知らない人が子どもに近づくと目立つようにするなど。

領域性の確保(Territorial reinforcement) 

特定のコミュニティの空間であることを強調するため、境界を明確にする。

監視(Surveillance)

何をしているかわかるような死角のない見通しのいい空間。

 

 

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 参考資料

https://tatsuki-lab.doshisha.ac.jp/DoshishaThesis2/thesis/2008/19051078tobiie.pdf

環境心理学と犯罪研究

 

心理学のはな

 

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