このページでは、それぞれの発達障害とそれに関連する脳の部位について解説していこうと思います。
たまに「発達障害は性格的な問題なだけ、がんばれば他の人と同じようにできる」ということを聞きますが、基本的にどの発達障害でもなんらかの中枢神経の障害が見られます。
ただ、発達障害のそれぞれの定義でも「中枢神経系に何らかの要因」というような記述にとどまり「脳のここの部位の活動が低下している」といったように明記されることはあまりありません。あくまでもこれから紹介するのは1つの仮説にとどまります。
これらの情報は発達障害について軽く理解するだけならばあまり必要がない知識ですが、発達障害に対してより知りたい、詳しく勉強していきたいと思っている人はこれらの基礎知識は抑えていくとより理解が深まると思います。
注意欠如・多動性障害(ADHD)
ADHDは落ち着きがない、長時間集中することが苦手、衝動的に行動してしまうといった特徴があります。
ADHDの原因となる脳部位についての有力な仮説に、大脳の前頭葉機能の異常があります。大脳の前頭葉は注意力や思考力、運動機能などに関わる脳の部位です。ここの働きが弱まり、注意力や集中力が低くなってしまっているのではないかと考えられています。
また、何か特定の遺伝子が原因の一つになっているかは不明ですが、遺伝率を参考にするとなんらかの遺伝子が関わっているのではないか、という考えもあります。
以前はアスペルガー障害や自閉症と呼ばれていたものもこれに当てはまります。
主な特徴としてこだわりの強さや社会性な能力の低さが挙げられます。こだわりの強さでは、何か特定のものにだけ興味を持って他のものへの関心が全くなかったりします。社会性の能力の低さでは単にコミュニケーションが苦手ということだけでなく、相手の気持ちを考えたり言葉の裏の意味に気づいたりすることが苦手だったりします。
ADHDにおいて前頭葉の働きに異常が見られることはよく知られていますが、ASDと脳の活動の関連についてはあまり語られていません。
ただ、側頭・頭頂接合部や下前頭回など社会性に関わってくる脳領域に異常が見られたそうです。
また、他者への共感的な知覚に関わってくる大脳の感覚運動野の機能の低下も影響しているのではないかと言われています。
さらに、ASDでは脳の中の脳梁という部位に損傷を受けているため右脳機能不全が見られ、左脳に機能が偏っているという意見もあります。
学習障害(LD)
学習障害は特定の学習領域が極端に苦手になることが特徴です。例えば計算だけ苦手であったり、文字の暗記が苦手であったり、漢字の細かいパーツを間違えたりします。
学習障害と言っても、その症状は人によって千差万別であるため、症状によってその要因となる部位も異なっています。
例えば、読み書きの障害では大脳の角回と呼ばれる部位の左脳側に異常が見られたり、言葉の理解が苦手な場合では左側頭葉の機能障害が見られたりします。