認知行動分析システム精神療法とは?

 

 

認知行動分析システム精神療法(Cognitive-Behavioral Analysis System of Psychotherapy、以下CBASP)は慢性うつ病に特化した心理療法です。認知行動療法の一種とみなされることもありますが、その中でも1990年代に普及していったいわゆる第3世代の認知行動療法の一つです。

 

CBASPではピアジェの発達段階に基づき、慢性うつ病の患者は前操作期でとどまっているという見方をします。

ピアジェの認知発達段階 - 心理学のはな

前操作期の認知の特徴として、自己中心性が挙げられます。

脱中心化が起こり、客観的で論理的な思考ができるようになるのは次の具体的操作期や形式的操作期といった操作期の段階ですが、慢性うつ病では対人社会的な発達が前操作期の段階で止まっています。

 そのため、自分自身と環境との相互作用が生まれなかったり、共感の欠如が出てきたりします。

また、通常の認知行動療法で慢性うつ病が改善しない場合は、このように因果関係を論理的に考えることができなくなっている可能性があります。

 

 

CBASPによる治療

状況分析

状況分析には明確化段階と修正段階という2つの段階があります。

明確化段階では、最近問題になった出来事を取り上げて、6つの段階に分けて記述してもらいます。

  1. どんなことがおこったのか
  2. その時、どんなことを思ったり、その出来事を解釈していったか
  3. その時、実際にどうなったか
  4. その出来事はどういう結果になったか
  5. その出来事に対し自分が期待する結果はどんなものだったか
  6. 期待した結果は得られたか(4と5は同じだったと言えるか)

 

多くの場合、4の実際の結果と5の期待した結果が異なっていることが多いです。

そこで修正段階ではどのようにして現実の結果と期待していた結果を一致させていくかを考えて行動していきます。

 

対人弁別訓練

これは転移を治療に利用した技法です。

転移とはカウンセリングの中で、クライアントがそれまでの人生の中で重要な人に対して抱いていた感情をセラピストに向けるということです。

転移とは? - 心理学のはな

まず、準備として人生において大きな影響を受けた重要人物について6,7人ほど話してもらいます。それぞれの人物にどのような影響を受けたかを書いてもらいます。

そしてカウンセリングの中で、転移的な情動体験が現れた際にはセラピストの反応と過去の重要人物の反応との区別を明確にすることで、安心感を与え、より有意義なカウンセリングにしていきます。

 

 *「慢性うつ病」という言葉の定義ですが、基本的には2年以上抑うつ症状が続いているものを指しています。

 

 

心理学のはな

 

ページリンク - 心理学のはな