防衛機制(適応規制)とは、欲求不満な状態(フラストレーション)や不安などから精神的安定を維持するための無意識の心の働きのことです。
防衛機制の研究で有名なのはアンナ・フロイトという精神分析学者です。「フロイト」という名前からもわかるようにあのジークムント・フロイトの娘です。アンナ・フロイトは、フロイトが想定した抑圧などの概念を整理して、防衛機制としてまとめました。
防衛機制にはいくつか種類があります。
精神病的防衛機制
精神疾患を発症した人や、まだ幼い子どもでよく見られる防衛機制です。
この種類の主な防衛機制に
否認
不都合な事実を認めようとしないことです。
躁的防衛
騒ぐことで不安な状況を乗り越えようとすることです。
その他、歪曲や分裂などがあります。
未熟・原始的な防衛機制
3~15歳くらいの子どもによくみられる、未熟な防衛機制です。
これらの防衛機制は対象関係論のクラインによって提唱されました。
主なものでは
退行(子ども返り)
幼児のように駄々をこねるなど、本来の年齢よりも幼い行動をする状態
投影
自分が相手に向けている感情を相手が自分に向けていると思う状態
例:「僕は怒こってないけど、母さんは怒ってるよ」(本当は自分が怒っている)
解離
不快な感情や記憶を意識から切り離した状態。悪化すると解離性障害につながる。
分裂(スプリッティング)
一つの対象に良い側面と悪い側面があることを理解できず、どちらかのみを認識して極端な価値判断をすること。以下の原始的理想化と脱価値化は分裂の一種と捉えられることもある。
原始的理想化
対象を現実にそぐわずすべて良い対象と見なして、悪い側面を認識しようとしないこと
脱価値化(こき下ろし)
原始的理想化とは反対に、対象のすべてを悪いと見なして、良い側面を認識しようとしないこと
投影性同一視
自身が相手に向けている感情を、他者が自分に向けている感情だと考えて行動し続けることで、本当に相手がその感情を持つようになってしまう。
投影と似た概念ではあるが、他者に投影した感情を他者が本当に持つようになるという点で異なる。逆転移と関連する概念である。
Ex:妻に対して怒りを持った男性が、逆に妻が自分を怒っているのではないかと感じ、おどおどした対応をすることで本当に妻が男性に対して怒りをもつようになる。
その他、自閉的空想、受動的攻撃などがあります。
中間的な防衛機制
成熟と未熟の間にある防衛機制です。
知性化
受け入れがたい事実を論理的に解決しようとする働きです。
抑圧
受け入れがたいことを忘れることで精神的安定を計る方法です。
反動形成
受け入れられない感情と逆に感情を表出するというものです。
合理化
満たされない欲求に対して、自分が納得できるような理由を作って納得しようとする働きです。
有名な話にすっぱいぶどうがあります。きつねが本当は食べたいブドウに手が届かなかったため「あのブドウはすっぱいから食べなくてもいいや」といってあきらめるという話です。
置き換え
直接意識されたり言動になってしまうと危険なものを、別のものに置き換える。
打消し
不安や罪悪感などの感情を別の考えで打ち消す
成熟した防衛機制
昇華
欲求や否定的な感情をを望ましいもの(芸術活動や学問など)へのエネルギーにする
例:ふられた悲しみを歌にする
ユーモア
自分のコンプレックスを他者を笑わせることに用いて、乗り越える
その他、愛他主義などがあります。
*防衛機制は種類が多く、どれを紹介しているかというのは人によって異なります。ここで紹介するのはあくまで一例です。
否認、逃避、退行、合理化、昇華、抑圧などは比較的いろんな人が紹介しているかなと思いますが、どこまで覚えればいいのかというのは実践のための知識なのか試験対策かで異なってくるかなと思います。