酒は百薬の長?
「酒は百薬の長」と昔から言われています。また、現代でも適量飲酒ならむしろ健康に良いと考えている人が少なくありません。
ですが、これはほとんどの場合当てはまらないことが多いです。一応飲酒が健康に良い影響を与える側面もないことはなく、全く飲酒をしない人よりも、適度な飲酒(一日に摂取する純アルコール量が10~20g)をしている人の方が、脳梗塞や虚血性心疾患などを発症するリスクが低いという研究結果もあります。ただし、適量を超えた飲酒だとこれらの疾病でもリスクが高くなります。さらに、高血圧、脳出血、がんなどに関しては飲酒量と発病リスクがほとんど比例して上がっていきます。
もちろん、お酒を飲むことが楽しい、付き合いで飲んでいるといった習慣をすべて否定するわけではありませんが、お酒が健康によい、というのは誤った認識ですので、そこは割り切った方がいいかなと思います。
というわけで、アルコール依存症と合併しやすい疾患をいくつか紹介していきたいと思います。
肝臓の障害
お酒と肝臓の関係は非常に有名ですね。アルコールは肝臓で分解と処理が行われますが、大量のアルコールは脂肪肝の原因になります。脂肪肝のうちなら断酒で改善されますが、脂肪肝でも飲み続けていると、アルコール性肝炎のリスクが高まったり、肝硬変になって回復が困難になります。
アルコール依存症の患者の約8割は肝障害を併発しているという調査もあり、いかにアルコール依存症が肝臓の健康に影響を及ぼすかがうかがえます。
脳障害
大量飲酒は前頭葉や小脳をはじめとする脳の萎縮を招く恐れがあります。
前頭葉が委縮すると思考力や集中力の低下につながります。
また、小脳がアルコールによって委縮する疾患をアルコール性小脳萎縮症と言い、歩行時のふらつきが目立つようになります。
その他、脳血管性認知症や脳梗塞など脳血管障害のリスクが高くなります。
アルコール依存症の患者さんの二人に一人は何らかの精神疾患との合併が見られるそうです。その中でもうつ病になる方はかなり多く、アメリカで行われた調査によると、アルコール依存症を発症した人はそれ以外の人に比べて3.9倍うつ病になりやすいという結果が出たそうです。
そして、さらにうつ病とアルコール依存症の併発は自殺の危険性が高くなるそうです。
社交不安障害
社交不安障害は、他人から注目を浴びるような場面や状況に過剰な恐怖や不安を覚え、そのような状況を避けようとする障害です。
社交不安障害の患者さんの中には、アルコール依存症を併発している方も少なくなく、アメリカでは社交不安障害と診断される人の48%はアルコール使用生涯の診断もされている、という報告もあります。
また、これらの病気を併発することで、アルコールへの依存度が重症化するということもあるそうです。
精神疾患とアルコール依存症は合併率が高く、アルコール依存症が他の精神疾患を招くだけでなく、他の精神疾患が要因となってアルコール依存症になる場合もあります。例えば、うつ病だと抑うつ的な気分を紛らわせるためにお酒を飲み、依存症に陥っていくことがあるそうです。
ここに書いたもの以外でも、がん、糖尿病、脂質代謝異常症などさまざまな疾患にかかるリスクが高くなります。お酒とはほどほどに付き合っていきましょう。
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