半年くらい前に世間を騒がせたとある条例が施行されました。タイトルにもあるように香川県のゲーム規制条例(正式名称:香川県ネット・ゲーム依存症対策条例)です。
この条例は、18歳未満の子どものゲーム利用時間を平日では一日60分、休日は90分までとしようという条例です。さらにスマホの使用時間についても言及し、中学生以下は午後9時まで、それ以降は午後10時までとしています。
「ゲームは1日一時間」というところばかり取り上げられていた気もしますが、実はそれだけではなかったわけですね。そして、強制力はなく、罰則もありません。
この条例が出された背景として、ゲーム依存症が社会問題になりつつあったことが大きな影響となっていたそうです。
ただ、この条例はかなり賛否両論、というよりネットの反応を見てるとかなり否定的な意見も多い印象です。
「時代遅れすぎる」、「こんなの誰も守らない」、「1時間を超えることが必ずしも悪いとは言えないのではないか」などの意見が飛び交い、さらにゲームでミスをすると「お前香川県民か?」と煽り文句として使われる事例も発生してしまいました。
この条例は完全に失敗だったのでしょうか?
結論からいうと、僕の意見としてはゲームの利用時間の管理に関する注目を集めるという点では成功でしたが、時間ばかり注目されたりしている点は失敗だったのかなと思います。
一つずつ解説していこうと思います。
まずこの条例の良かった点について書いていこうと思います。
ゲームのプレイ時間に注目するようになること
これはどちらかというとゲームを与えることに抵抗がない親に対するメリットなのかなと思います。
例えば、まだ小さい赤ちゃんや小学校入学前の子どもが泣いたり、駄々をこねたりしたときにスマホで動画を見せたりゲームをやらせたりする親御さんもいると思います。それがたまにだったりすればいいのですが、泣くたびにスマホをさせているのはさすがに悪影響です。
こういった子育てのやり方になれてしまった家庭に警鐘を鳴らすという意義はあったのかなと思います。
次に反対に悪いところについてです。
「1日1時間というところばかり目立ってしまった」
そもそも「ゲームは一日1時間」というのは適切なのでしょうか?ゲーム好きの人なら知っているかもしれませんが、元をたどればこの言葉はゲーマーの先駆者ともいえる高橋名人がおっしゃったものです。高橋名人はゲーム業界関係者でありながら、「ゲームばかりするのではなく、他のこともしていこう」という考えを持っており、ゲームと子どもとの健全な関係を目指してこのような発言をされたそうです。つまり最初に一時間という時間設定がされたのは科学的な研究ではなく、あくまでもゲームをやりすぎるなという意味でされたものです。
*高橋名人ご本人も今回の条例に関して、時代背景に異なることため、すべてを合わせることはできないと言及しています。
一応、1日のゲームのプレイ時間が1時間を超えると身体的、社会的問題が出てくるといったような旨の研究結果もあったそうです(ちょっと探してみたんですけど見つかりませんでした…)
ただ、これらを総合して考えても具体的な時間ばかり目立ってしまったのはあまりよくなかったと思います。各自の家の都合もあるでしょうし。
では、どうするべきだったのでしょうか?
個人的には依存症全般の防止条例といったようにお酒やたばこなど大人がなる依存症についても言及したり、あるいは子どもに注力したければ「子どものゲーム習慣改善キャンペーン」などとしても良かったのかなと思います。
条例で時間を決める、というとなんとなく県が一方的に子どもを縛っている感じがしてしまいます。
ですが、ゲームしかり、スマホしかり、一番大事なのは自律性だと思います。
子どもの頃からゲーム依存症になってしまったらどうしよう、子どもが自分でコントロールする力が弱いことを考慮して、とりあえず制限時間を決めることはたしかに一つの有効な方法なのかもしれません。ただし、それでは大人になって、自分で自分自身を律していかなければいけない時に、自分の周りにある様々な魅力に耐えることができるでしょうか?それよりも、「宿題をやってからゲームしよう」とかある程度自由だけれども制約がある中で、しっかり自分のしなければいけないこととしたいことを両立する力をつけていくように促すことの方が有効かなと思います。また、せっかく県の議会で決めることならば家庭の努力に任せきりではなく、ゲーム依存の怖さを知ってもらうためにゲーム依存症になるとどのようになってしまうかなどを実際に体験した本人や病院の関係者に学校で講演してもらうこともいい気がします。
家族ができることとしては、どうしてゲームばかりずっとやっていてはだめなのかということを説明したり、しっかりとほかにやるべきことができているかチェックすることが大切かなあと思います。