心の理論という言葉をご存じでしょうか?
名前を聞いたことがあるという人も、それがどのような意味なのかうまく説明できないという人もいるかもしれません。
心の理論は一言でいうと「自分や他人の心の状態をしっかり区別し、その状態や影響ついてしっかり理解すること」、さらに嚙み砕いて言えば「他者の心の状況を想像する力」です。
では具体例として、誤信念課題と言われる簡単なクイズのようなものを紹介していきたいと思います。
サリーアン課題
サリーはぬいぐるみをおもちゃ箱に入れて、出かけていきました。
その間にアンが入ってきておもちゃ箱でぬいぐるみを見つけて遊びました。
遊んだ後、アンはクローゼットの中にぬいぐるみをかたずけました。
サリーが帰ってきてぬいぐるみで遊ぼうと思いました。
サリーはクローゼットとおもちゃ箱どちらを開けるでしょうか。
この問題では、心の理論が発達していない子どもだとクローゼットを探すと答えます。ぬいぐるみがクローゼットにあると自分が知っているためです。心の理論について理解していると、サリーはアンがぬいぐるみをクローゼットに移したことを知らないとわかるので、サリーはおもちゃ箱を探すだろうと予測します。
サリーアン課題は心の理論に関する問題として、必ずといっていいほど引用されていますが、他にもマクシ課題やスマーティ課題といったものもあります。
マクシ課題
マクシ君が青い戸棚にチョコレート隠して、出かけていきました。
その間にお母さんがチョコレートを見つけて、緑の棚に移しました。
マクシ君が帰ってきたらどこを探すでしょうか。
勘の良い人は気づいたかもしれませんが、これは登場人物や物が変わっただけで、サリーアン課題と同じですね。このように問題の仕組みは同じでその見た目を変えることで、本当に理解しているのか確かめることができます。
スマーティ課題
まず実験参加者にスマーティ(お菓子の名称です)の箱を見せ、中に何が入っていると思うか聞きます。
実際に中を開けると、鉛筆が入っています。
そのあと、別の人を連れてきます。
そこで、その人が箱の中身を何だと思うかを聞きます。
心の理論を理解できていれば「この人は箱の中身をスマーティだと思います」と答えることができますが、理解できていない場合は「この人は箱の中身を鉛筆だと思います」と答えるでしょう。
心の理論は子どもの発達を測る一つの指標としても用いられています。
発達心理学の研究によれば、心の理解は幼児期の早期(具体的には18カ月以降)から徐々に獲得されていくものではないか、とされています。
さらに3歳から5歳くらいになると上記のような誤信念課題にも答えられるようになっていきます(3歳児の正答率は約18%、5歳児では約85%です)。平均したら4歳くらいでしょうかね。
というわけで心の理論の解説でした。