解離性同一性障害とは
解離性同一性障害(以下解離性同一症)解離性障害の一種で、いわゆる多重人格です。つまり、一つの体に2つあるいはそれ以上の人格が存在している状態です。
それぞれの人格は他の人でもそれが違う人格だとはっきりわかるくらいそれぞれの性格は異なっていることが多いです。おとなしい人格、怒りっぽい人格、知的な人格、子どものような人格…というような感じです。
さらに興味深いのはそれぞれ名前を持っていたり、別の人格を気遣う人格がいたり、他の人格から恐れられている人格があったり、主人格(元の人格)はそれに全く気づいてなかったりするなど、人格によってその優位性が異なることがある点です。完全な協力関係ではないにしろ、あたかも一つの体を動かすための集団組織といった印象を受けます。
とても特徴的な症状ですので、ドキュメンタリー番組で取り上げられたり、ドラマでこの症状を持った人物が出てくることも多い気がします。個人的には昔「MR.BRAIN」というドラマで仲間由紀恵さんが演じていた役が解離性同一症を疑われた容疑者の役で、印象に残っています。
また、実際に解離性同一症を発症した例として、ビリー・ミリガンという強盗強姦事件の犯人がいます。彼は逮捕された後、解離性同一症だったことがわかり、それもなんと24の人格があることがわかりました。彼は幼い頃に性的虐待を受けており、それがきっかけで解離性同一症になったのではないかと考えられています。
個人的に驚いた点は、人格によって描く絵の雰囲気が全く異なるということです。
原因
なぜこのような症状が引き起こされるのでしょうか?
解離性同一症は心因性の精神疾患で、強いストレス体験が原因とされています。中でも子どもの頃の身体的虐待や性的虐待が引き金となるケースが多いです。
私たちがストレスを受けた際の防衛機制として「解離」があります。これは自分が体験したことや感じたことを自分自身の体験とは感じず、どこか他人事のように感じることです。
これが深刻になっていくと解離性同一症を含む解離性障害になっていきます。
このようなストレス体験が原因となる精神疾患として他にはPTSDが挙げられます。似たような要因で解離性同一症とPTSDと異なった疾患として現れる要因はあまりよくわかっていません。一説では、解離性同一症は安心できる場所(いわゆる避難所)がないことで、解離という防衛機制を助長し、疾患になっていくのではないかと考えられています。
治療
解離性同一症に薬物療法はあまり有効ではありません。解離性同一症のための薬というのがないのと、複数の人格が出てくる関係上、薬の飲み忘れが発生しやすくなるためです。
一応、うつ症状が見られる場合に抗うつ薬を用いるなど補助的な役割として用いられることはあります。
多くの場合、精神科医やカウンセラーなどとの対話を通して、改善を目指していきます。
治療の目的は人格を消していって一つの人格にするのではなく、すべての人格を統合していくことです。先ほども言ったようにそれぞれ人格には役割があり、意味のないものではありません。複数の人格が一人の人格の様々な側面になっていくイメージでしょうか。また、人格を消そうとすると、消えるのを恐れた主人格以外の人格が自傷行為に走ったり、治療に協力的でなくなる場合があります。
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