前回の記事では過去にどのようなウソ発見器があったのか紹介しましたが、現代ではどのようなものがあるのでしょうか。
現在、実際の犯罪捜査ではポリグラフ検査と呼ばれるものが用いられています。
ポリグラフ検査とは呼吸や皮膚電気や心拍数など生理学的な反応を測定するもので、犯罪心理学では測定した生体反応をもとにしてウソを発見する検査を言います。
今回はポリグラフ検査の中でも、コントロール質問法、隠蔽情報操作、事象関連電位を用いた虚偽検出について説明していこうと思います。
コントロール質問法(CQT)
「あなたが犯人ですか」と聞いてその答えがウソかどうかわかれば手っ取り早いですが、残念ながらこのような質問は犯人であってもなくても動揺させてしまうため生理学的反応を見てもウソか本当かわかりません。
そこで考えられたのが、調査の対象の事件に関する質問(関係質問)と、容疑者が過去に犯したと思われる犯罪についての質問(対象質問)を混ぜることで
犯人→昔の犯行より今の犯行を隠したいので関係質問で生理的反応が変化する
犯人ではない→今回の事件は関係なく昔の犯行を隠したいので、対象質問で生理的反応が変化する
といったことが予想されます。このやり方は正確性は後述のCITと同じくらいありますが、フォールスポジティブ(無罪の人を有罪としてしまうこと)の危険性が大きいため、そこがデメリットと言えます。
隠蔽情報操作(CIT)
現在日本の警察で最も用いられている虚偽検査ともいわれています。
これはまず、報道されていない事件の事実に関する質問(裁決質問)と関係のない質問(非裁決質問)をそれぞれ提示することで、犯人なら裁決質問で何かしらの生理的反応が変化するため、それを観測していくというものです。
実例を挙げると
「犯人は被害者の財布を取っていった」という事件の情報が報道されていないとすると
①「犯人は通帳を取っていきましたか?」
②「犯人は腕時計を取っていきましたか?」
③「犯人は財布を取っていきましたか?」
④「犯人は家の鍵を取っていきましたか?」
という質問を用意します。犯人であってもなくても、すべての質問で「わかりません」「知りません」というような答えがでてくることが予想されますが、犯人の場合は③の質問で何かしらの生体反応が他の答えと異なってきます。そのため、ウソをついていることがわかるというわけです。
このCITのメリットは事件の様々な観点(凶器、遺体の隠し場所、殺害方法など)で、質問を構成することができ、より検査の精度を高めることができることです。
CITの結果はかなり正確で、またフォールスポジティブがかなり少ないため、有用性がかなり大きいとされています。
事象関連電位を用いた虚偽検出
技術が進歩し、中枢神経系の活動を観察できるようになったことから、中枢神経系を指標にした虚偽検査が開発されました。
指標の一つとして用いられたのがこの事象関連電位(ERP)です。詳しい説明は省略しますが、要は脳波を測定していくやり方で、先ほどのCITのやり方と同じように非裁決質問と裁決質問を提示していくと、犯人ならば裁決質問でほかとは異なる脳波が測定できるため、ウソをついているかわかるというわけです。
この検査方法は高い精度で検出されることが研究でわかっていますが、脳波はちょっとした刺激に影響を受けてしまうため、実務には用いられにくいことがデメリットです。
参考書籍