人間の精神的な成長、発達について研究した心理学者は多いです。
今回はその中でも人の一生を8つの段階に分けて一つ一つの段階でそれぞれ心理的・社会的な課題があるという、エリクソンのライフサイクル理論について説明していきたいと思います。
なお、目安の年齢を書いていますが、これらは前後することがあるので、あくまで一例だと思ってください。
乳児期(0~1歳半)
基本的信頼vs基本的不信
この時期では母親と過ごしていく中で、母親に受け入れられたり、母親を受け入れることによって他者への信頼感を得ます。得られなかった場合は不信感を持つことになります。
「基本的」とついているのはこの時期に獲得した信頼感がその後の信頼の基礎になるためです。
幼児前期(1歳半~3歳)
自律性vs羞恥と疑惑
しつけなどによって自身の行動と心の自己統制ができるようになり、自律性を獲得していく時期です。自律性を得ると、一人の人間であるという実感が持てるようになり、自分の意志を持てるようになります。失敗すると自分を律することができないことを恥じたり、自律性を身に着けられないのではないかという疑惑を持つようになります。
幼児後期(3~6歳)
積極性(イニシアティブ)vs罪悪感
遊びの中で「なぜそれがしたいのか」という欲求がどうして出てくるか理由がわかるようになり、積極性に、主体的に行動するようになります。また逆に積極的になれないと罪悪感を受けるようになります。
学童期(6~12歳)
勤勉性または生産性vs劣等感
自分で獲得したもの(学んだもの)が自分であるというとらえ方を獲得できれば、つまり成功体験を積んで勤勉性を得ることができれば、有能感を持つようになっていきます。反対にそれを十分に学ぶことができなければ劣等感を持つことになります。
青年期(12~20歳)
同一性vs同一性拡散
同一性(アイデンティティ)とは「自分」の不変性と連続性のことであり、自己を確立することができればこの同一性を得ることができます。そして、その資質が持てないことを同一性拡散といいます。
エリクソンは特に青年期のアイデンティティの確立を重視していました。
アイデンティティの定義の説明は難しいですが、「自分はこういう存在だ」と自分自身について一定の自信を持っている状態に至ることと言えます。
そして、アイデンティティの獲得のためにはいろんな役割になることを体験してみる時間が重要なので、モラトリアム(社会的な義務や責任を果たすことを一定期間の猶予をもらっている状態)という青年期の延長が必要だと述べました。
このようなモラトリアムの時期も経て、いろんな可能性の中から何か一つ特定の職業を選び、その後その職に忠誠を尽くすようになっていきます。
成人前期(20~40歳)
親密性vs孤立
対人関係で相互性を体験し、異性と仲を深め、結婚し、親密性を得る時期です。もし得られないと孤立に陥ります。
成人期(40~60歳)
生殖性vs停滞
子孫を生み、後輩を育て、次世代に自らの資質を継承して世話をしていきます。
この活動がないと、他者との関わりが少なくなっていき停滞してしまいます。
老年期(60歳~)
統合または完全性vs絶望と嫌悪
人生の勝利や失望に自己を適応させ、統合することができるか、つまり自分の人生を振り返って納得できるかどうかという時期です。
納得できず、資質が得られないと人生に絶望したり自分に嫌悪感を抱くようになっていきます。
エリクソンの発達課題はその時期を過ぎると2度と取り返しがつかないというものではないので、その点はご安心を。
また、社会とのかかわり方の多様化が進んでいる現代ではこの考えに当てはまらなくてもいいのではないか、という意見も出てきています。
機会があれば他の発達理論も紹介していきたいですし、それぞれ比べてみるのも面白いかなと思います。