ユニセフの幸福度調査について

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少し前に驚くべき報告がニュースでされていました。

 

ユニセフ(国連児童基金)・イノチェンティ研究所から発表された「レポートカード16」では、新型ウイルス流行以前のデータを用いて先進国の子どもたちの精神的健康や身体的健康、スキル(学力やコミュニケーション能力など)について調査し、ランキング形式にまとめています。

 

精神的健康は子どもの生活満足度や自殺率など、身体的健康は肥満や死亡率など、スキルは読み書き計算などの学力や、友達を作る能力などを参考にしています。

 

日本は総合ランキングでは38か国中20位でした。これだけだと真ん中ぐらいだな、という感想しかでてこないかもしれませんが、実はその内訳はかなり極端です。スキルは27位と中間の少し下くらいで、身体的健康は1位、精神的健康は37位で下から2番でした。

全体的にみると、先進国の平均ぐらいと感じますが、心身の健康の状態はかなり解離していることが判明しています。

 

 

精神的健康の項目をもう少し細かくみていきます。

自殺数のランキングは15歳から19歳の間の10万人あたりの自殺率に基づいています。

それによると、日本は10万人あたり7.5人でこれはランキングの下位の方ですが、精神的健康よりも高い順位でした。

一方生活満足度のランキングでは、現在の生活に満足していると答えたのは62%で、ワースト2位でした。生活満足度の低さが精神的健康に大きく影響していのかなと思われます。

 

また、スキルのランキングは、僕は日本は義務教育が充実していると思っていたので、先進国の中でも高い方なのかなと予想していましたが、あまり高くはありませんでしたね...スキルの関連項目を見てみると15歳までに基本的な読みや計算ができるようになる人は日本では73%でランキングとしては5番目に高かったです。

ただ、友達を作るのが簡単かどうかという項目ではワースト2位で、この項目がスキルの順位を大きく下げる要因になっているのだと思います。

 

今回の結果を見てみると義務教育で習うことが読み書きや計算など実践的な技能に偏っており、精神的な豊かさに対する支援はまだまだなのかなと思います。

 

実際自分が小中学校にいたころを思い出してみても、友達の作り方やストレスの対処法などは学校で習うようなことはなかったです。

 

いじめの撲滅を目指したり、ソーシャルスキルレーニングなどを行っていくべきだと思いますが、現場の教職員の方々の多忙さを考えると、それも難しいのかもしれません。

 

 

 

 

最後に話が変わりますが、身体的健康は英語でphysical health、スキルはそのままskillsですが、精神的健康は英語ではなんと書かれているでしょうか?

精神的健康はMental healthではなくMental well-beingと書かれています。このwell-beingというのはどういった意味でしょう。

 

この言葉は福祉心理などを学んでいるとよく聞きますが、その中でもそのままwell-beingと書かれていたりするので、なんとなく見たことはあっても定義はわからない、という人が多いと思います。僕も少し前までそうでした。

 

Well-beingの類語としてWelfareが挙げられます。このWelfareという言葉を和訳すると「福祉」となります。Well-beingも同じように「福祉」というのが適訳と思いますが、Welfareのそれとは少しニュアンスが違います。

 

Welfareは障害を持っている人などいわゆる社会的弱者を支援して、健常者と同じように生活できるようにするというものです。

対して、Well-beingは個人の誰もが主体性をもって自己実現を求める、というものです。

 

私たちが現在よく使っている福祉もwelfareの意味が強いですが、最近はwell-being的な意味も含まれると考える人も多くなってきています。

 

イメージとしてはwelfareはマイナスをプラスにすることを目的としていて、well-beingはそれだけでなく、プラスをよりプラスにしていく感じかなと思います。