統合失調症の神経化学的要因

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以前、統合失調症についてまとめた際に、あまり神経生化学的な要因について書くことができなかったので、そのことについてつらつら調べたことを書いていきたいと思います。

 

前記事はこちら

psycholosteak.hatenablog.jp

 

 

 

ドーパミン仮説(異常セイリアンス仮説)

現在統合失調症の原因としてもっとも一般的な仮説がドーパミン過剰分泌説です。

 

このドーパミン過剰分泌説の有力な点として、幻覚や妄想が発生する説明がつく、ということがあげられます。

 

以前の統合失調症の記事でも軽く触れましたがドーパミンは何かいいこと(報酬)が起きたり手に入ったりしたときだけでなく、それが手に入りそうな状態でも分泌されます。なぜかというと、目的となる行動の生起頻度を高めるため、そのヒントとなる刺激を際立たせるためです。

 

おなかをすかせたジャングルのおさるさんで考えてみましょう。報酬はバナナです。当然、バナナを食べるときにもドーパミンは分泌されますが、エサを探していて、バナナを見つけた際にもドーパミンは分泌されます。周りにはいろんな花や草があって、うっかりするとバナナを見過ごしてしまうかもしれません。しかしバナナが目に入ったとき、ドーパミンが分泌されることで、バナナという視覚の刺激が他の刺激より際立って感じられるのです。

 

そんなふうに我々の認知に一役買っているドーパミンですが、これが過剰に分泌されるようになるとどうなるでしょう。

 

本来ならば報酬に関連する刺激にのみ反応するドーパミンが、過剰分泌されることによって、全然関係のない刺激にも分泌されてしまい、何気ない風の音や人の声が他の刺激より際立って感じられるようになります。そうすると、脳の別のところで情報の補填がされて風の音が自分の命を狙う何者かの気配に感じたり、他人の声が悪口に聞こえるようになるのではないか…というのが、異常セイリアンス仮説です。

 

ドーパミン統合失調症の原因であるというその他の根拠として、ドーパミンの分泌を抑える薬を服用すると陽性症状が収まることが報告されています。また、統合失調症と同じような幻覚や妄想症状が見られる覚せい剤では、脳内のドーパミンの分泌を促進させる効果があるそうです。これらも上記の異常セリエンス仮説の裏付けになりますね。

 

ただしこのドーパミン仮説では思考鈍麻などの陰性症状の説明ができなかったりするので、この点についてはいまだ疑問が残ります。

 

 

 

グルタミン酸機能異常仮説

グルタミン酸は興奮性アミノ酸神経伝達物質で、これは学習や記憶などに関連する神経伝達物質です。

その受容体であるNMDA受容体にの機能低下が統合失調症の原因の一つではないかと考える説です。

 

なぜそのような機能低下が起こるかは特定されていませんが、NMDA受容体の構造の変化や内因性アンタゴニスト(拮抗薬)の濃度の変化が原因ではないかと推測されています。

 

この仮説はグルタミン受容体拮抗薬が、

麻酔薬として用いると副作用で幻覚やせん妄が見られる

依存患者には解体症状も見られる

統合失調症患者に用いると陽性症状・陰性症状の両方が悪化する

といった特徴があったため、ドーパミン過剰分泌説に次いで有力な説の一つとなっています。

 

グルタミン酸仮説に基づく薬剤の開発も進んでいて、今後陰性症状などに効果的な薬が導入されることも期待されています。

 

ノルアドレナリンの分泌異常説

ノルアドレナリンの過剰分泌は統合失調症や不安障害、気分障害に影響することがわかっています。

 

ノルアドレナリンが過剰分泌の場合は幻覚や妄想など陽性症状に似た症状が見られ、分泌が少なくなった場合は感情鈍麻や自閉など陰性症状に似た症状が見られるそうです。

そして、統合失調症の患者の脳でも陽性症状でノルアドレナリンが上昇しているのを見られ逆に陰性症状では減少しているのも見られました。

 

ただこの仮説でも陽性症状と陰性症状が同時期に見られることなどの説明がつかず、疑問が残っています。

 

 

 

神経化学は難しい単語が多くて調べてまとめるのも一苦労ですね…