心理職が著名人の心理について言及するのはありなのか

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少し前の話ですがトランプ大統領の姪であるメアリー氏の書いたトランプ大統領の暴露本が話題になりました。

 

 

 日本語版はまだ出ていないみたいですね

 

アメリカはもうすぐ大統領選ということもあっていろんな暴露本が話題になる中で、この本もアメリカ国内だけでなく日本でもニュースで取り上げられたのを覚えています。

 

この本が他の暴露本と違う点は著者のメアリー氏が臨床心理士の資格を持っており、専門家としてトランプ大統領の精神的な部分について解説している点です。

 

例として、どんなことを言っているのかあげると、

トランプ大統領はパーソナリティ障害

トランプ大統領の母が不眠症だったので、親からの愛を受けることができなかった

 

といったようなことを言っており、それを根拠に「彼は大統領にふさわしくない」といった批判になっています。

 

 

ところで、僕と同じように心理学を学んでいる人やあるいは実際に心理士として働かれている方々はこう思ったのではないでしょうか。

 

本で特定の個人の性格や心理状態について言及するのは許されるの?

 

この点について僕なりの見解を書いていきたいと思います。

 

 

 

 

アメリカ精神医学会の倫理規約の第7.3節は別名ゴールドウォーター・ルールというきまりがあります。

 

これは公的人物に対して正式な検査を行わず、精神医学に基づいた発言を公の場ですることをタブーとするという規定です。

 

1964年に当時大統領選に立候補していたバリー・ゴールドウォーターに対してとある雑誌が「約1200人の精神医学者が精神的に大統領に不適切だと述べている」と書いた記事を発行したためこのような規約が生まれました。

 

一見、メアリー氏がトランプ大統領の心理状態について本で記述するのはこの規約に反する行為といえます。ただ、今回の事例は以下の理由でゴールドウォーター・ルールが適応されないのではないか、という意見もあります。

 

 

まず、メアリー氏がトランプ大統領の姪にあたる人物ということで赤の他人という訳ではないことが挙げられます。

 

またそもそも著名人もSNSを使って直接発信することができるようになった現代においては精神医学の専門家も発信していくべきだ、と考える人も少なくなく、ゴールドウォーター・ルールは現代の社会システムと合っていないのではないか、と考える流れもあります。実際、メアリー氏以外にも精神科医の立場からトランプ大統領を批判する人たちもいます。

 

 ただ、僕の個人的な意見としては、やはり人の心のケアに携わる人間としては大勢の人に見られうる場で特定の著名人についての批評を心理的な観点から行うというのは、極力避けるべきかなと思います。

 

そう考える理由として、まず一つに心理職に対する不信感につながるということです。

著名人に対して「あの人は~症だからふさわしくない」とか「~病だから辞めた方がいい」とか言っている精神科医やカウンセラーにはあまりかかりたりたくないと思う方が多いのではないでしょうか。また、あまり心理職の名称を盾に主張をしていくと、心理職全体の不信感にもつながってしまう気がします。

もちろん心理職も人間なので、誰かに対して不満を持ったり文句を言ったりすることはあると思いますが、心理職の立場から本に書いて大々的に述べる必要は感じません。

 

また、今回の事例にもあてはまりますが、本当に心理学的な見地から批評する必要があるのか、と思うこともあります。トランプ大統領は4年間職務についていてどんな人となりか、どんな性格なのか、というのはある程度誰でもわかることで、そこで心理的な診断を持ち込むのは必要ないのかなと感じます。また、時間をとって診察やカウンセリングをしていない分、いかに専門家といえどその診断が正確とは言い切れません。

 

以上の点から、今回のように心理士が親戚とはいえ不特定多数の人間に見られる本の中で個人の内面についての言及をする、というのは個人的にはアウトかなと思ってしまいます…

 

 

もちろん、一市民として政治について思うことを主張する権利はあるので、そういったことは心理職の立場ではなく、一人の個人として言うべきではないかなと僕は思いました。

 

今回はアメリカの事例でしたが僕が認知していないだけで日本でも似たようなことはあるでしょうし、今後も起こりうることなのかなと思います。

 ただそれが心理職全体でみられるようになってくるのはあまりよくないのではないでしょうか。

みなさんはどのように考えますか?

 

 

 

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